28 今再び、心理的安全性について

社員の笑顔 コラム

最近一般化した言葉に「心理的安全性」があります。

組織の成功循環で使われる「関係の質」という表現も目にすることが多くなりました。
これらの言葉に限らず、組織開発という言葉が正しく解釈されていないと感じることがよくあります。
その方達に共通するのは、組織開発、心理的安全性、関係の質という言葉には
「甘くて、ゆるい」というイメージがあるようです。
なんとなく、仲良しこよし、みんなで傷をなめ合おうという感じがあるのかも知れません。

実は全く違います!
これは以前にも書いたことがあるのですが、
大切なことなのでもう一度書こうと思います。

みなさんはマズローの欲求5段階説はご存じですよね。
もう古典に属しそうな理論ですが、
人のモチベーションについて低い階層の欲求を満たすことで
上の階層に上がることができるとされています。

いろいろな例外はありますが、
基本的なモチベーション理論としてはとても有効だと思います。

一番低い階層は「生理的欲求」ですね。
ご飯を食べたい、夜は寝たいという、
生物として生存するために不可欠な欲求を満たすことができなければ、
とてもじゃないけど前向きにがんばろうなどという意欲が湧いてくるはずがありません。

2番目も命の危険が無い状態である「安全欲求」ですが、
これも、まぁ、当然でしょうね。
それらが満たされると、次は「所属欲求」が現れます。
これは自分の居場所がほしいと言う欲求ですね。
ここにいても良いよ、もあるし、ぜひここにいてほしい、という状態もあるでしょう。

そこで貢献できている自分を感じたり、仲間から承認を受けることで、
ようやく一番上の階層である「自己実現欲求」に到達します。
これがモチベーションの正体と言っても良いでしょう。

組織変革の世界的権威であるティモシー・クラーク氏によると、
心理的安全性も同様に以下の4つのレベルに分けて説明されています。

これは上から下に向かってレベルが高まるイメージです。
これらを下位の階層である「入口」側からながめるとどう見えるでしょうか?
欲求5段階説なら、最下層は「ご飯が食べられること」になりますが、
もう一つ高次元の「安全欲求」の方が比較にふさわしいかなと思います。

肉体的に精神的にもダメージを受けない状態が欲しい(欲求)のが「入口」に見えます。

組織開発を「甘い」と感じる方達には、
心身共に疲弊しない状態を求めているのが「甘い」と見えているのだろうと思います。
心理的安全性の4段階を下のレベルから見ると「インクルージョン安全性」で、
単純に言うと「仲間として認められている」と感じることです。

ここでも承認されなかったり、叱責されたりすると安全を感じないので、
おそらくそれを「甘い」と表現しているのだろうと思います。
でも着目してほしいのはそれぞれの出口の部分です。

欲求5段階説なら、自己実現から自己超越にまで至る高レベルのモチベーションを
発揮する可能性が示されています。
心理的安全性でも現状打破に挑戦する強い意欲が現れるとされています。
経営者が求めるコンピテンシーは、欲求5段階説や心理的安全性の入口側にあるのではなく、
出口にあることをもう一度冷静に見てほしいと思います。
入り口はあくまで通過点でそこに留まることは想定されていません。

入口の状況だけを見れば、「甘く、ゆるい」と見えるかも知れませんが、
その先に進むためには、最初の入口をくぐらないとゴールである出口に
たどり着かないこともまた事実なのです。

逆に言えば、入口に入りやすい状態を作ることによって初めてゴールの状態が手に入るのであれば、
その入口を用意しないと言うことは、ゴールに到達するための扉を閉ざしていることにならないでしょうか。
もしそうであるなら、組織の成長を阻害しているのは「経営者であるあなた」だと言う論理も
なり立つかも知れません。
ここでいうゴールの状態とは組織が活性化し、自走型組織になっていることです。

組織変革コーチである私は、ビジョン実現に立って俯瞰して見ているのでゴールが目の前に見えています。
ところが、「甘く」見えるからという理由で、ゴールに繋がる入口に入るのを躊躇して
さまよっている組織がとても多いように感じます。
あぁ、もったいない・・・・というのが私の偽らざるホンネです。

経営者には論理的な方が多いのですが、どうもこの部分は論理性よりも、
自分の過去の体験や経験を優先するという感覚的な判断になってしまっているように感じます。
メンタルモデルの書き換えが必要な場面ですね、などと横文字を使うと受け止めやすいかも知れませんが、
これは高齢者の認知療法と全く同じプロセスで「思い込みの書き換え」を行うと言うことになります。

認知療法・・それがいかに難しいことかは、
私自身も認知の書き換えに苦労してきたのでよく分かります。
でもこの部分に目をつぶっていては本質的な組織変革は「絶対に」成功しないと断言しておきます!!!!

メルマガを書いて興奮していてはいけませんね。
組織変革が甘いなどという幻想はどうか持たないでください。

経営は命がけと言われますが、組織変革も命がけなんですよ。

【質問です】

あなたの組織では、
経営者が心理的安全性を正しく理解されていますか?

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