002 後編:売上があがったのに社員の顔に笑顔が見えず、離職者が増えた会社

社員の笑顔 組織変革事例

前号からの続きです。

リストラされてから半年後に、
初めて契約してくれたクライアントにマジ本気の支援を開始しました。

数ヶ月で売上は上がり始めたけど、社内の空気は重いまま・・・

社員の顔に笑顔が見られないことを悩み、大きな決断をしましたというのが前編のお話でしたね。
社長が部下の努力を認めず、怒鳴り続けているということも書きました。

何冊も本を買ってきて、さまざまな手法を学び、手を変え品を変えて、
社員の努力を認めてあげてほしいと伝えても、全く聞いてくれません。

初めて契約してくれたクライアントになんとかして貢献したい!

その思いでがんばったのですが、相変わらず、何を言っても聞いてくれません。
未熟な私はもう言うことが尽きてしまいました。

その時に「傾聴」という言葉に真剣に向かい合いました。
もちろん意味は知っていましたし、「ちゃんとやっているつもり」でした。

でも、「本当にできているか?」とあらためて自分に問いかけると、どうも怪しい気がしました。
社長の話を聞いているとき、真顔でふんふんと頷きながら「傾聴」していたのですが、
心のなかでは・・・
・あぁ、この話は3回聞いたなぁ。
・すごく良いことを言っているけど、どうせやらないんだろうなぁ。
こんな事を考えながら聞いている自分に気が付きました。

おぉ、なんということでしょう!
私は社長の話を聞いているとき、心のなかでずっと「否定」を続けていたんです!
自分が相手を否定しながら、相手には他の人への承認を求める。
そんなことがうまくいくはずがありません。

そこから私は本気で「傾聴」の修行をはじめました。
まず取り組んだのが滝に打たれる修行です。

 

 

 

というのは冗談ですが(汗)

誰と会うときも、ひたすら真剣に相手の話を聞き取ろうと努力しました。
ここはまたあらためて詳しく書いてみたいなと思っているのですが、
1週間かける内観療法もやりました。

修行を始めて、数ヶ月経ったころでしょうか、
あっ、いまぼくはこの人の話を傾聴できている!と感じられる一瞬がありました。

でも、正直に言うとそれは長く続かず、数分もすると傾聴力が薄れていく自分を感じました。
ただ、徐々に傾聴できていると感じられる時間が長くなり、
半年も経つと、今日の面談はずっと傾聴ができていたなと思えるようになってきたんです。

その時に気がついたのですが、面談している相手のことを「好き」になっている自分がいたんですね。
「好き」だと感じているから、何を言われても「もっと聴きたい」と自然に思えるし、
話の中身よりも相手の気持を感じられるようになることができてきました。
そうすると、本当に不思議なことに、頑固に社員を怒鳴り続けていた社長が徐々に変容を始めたんです。

私は驚きました。
いままであれだけ何を言っても全く聞いてくれなかった人が、
話を傾聴するだけで、私が何も言わないのに内省を始めてくれたんです。
社員への接し方も大きく変容しました。

その結果として社員も変わらざるを得なくなり、何よりも社内が明るくなりました。
その頃には退職者もいなくなり、全社的に対話会が始まり、営業部と生産部の話し合いや、
本社と東京支店の話し合いが定期的に行われるようになりました。

ある日、クライアントの経理部長からあわてた声で電話がありました。
話を聞いてみると、メインバンクの支店長が久しぶりに訪ねてきて、
いままでと違って楽しそうな社員の様子を見て驚いたそうです。
それだけなら良いのですが、
「どうやってそんな対話会を定着させたのか知りたいので、銀行の朝礼で話しをして欲しい」
という依頼が来たんです、と言ってあわててたんですね。
この経験から、ホンモノの「傾聴」の大切さと威力を感じました。

クライアントの支援の方向性を、ビジネス推進から、組織変革に変えることを決めました。
それに伴い、社名も変更しました。
それからのわが社のビジョンは「社員も経営者も笑顔で働ける組織づくり」となりました。

なんだか「ミライズ創研」誕生秘話のような話になりましたが、
55歳でリストラされてから、傾聴力を磨く修行をしている頃が一番苦しかったように思います。
今となればこれが私の原点ですね。
私をリストラしてくれた社長には、よくぞリストラしてくれましたと感謝しています。

長い間、社員をほめてほしいという私のお願いを一切聞いてくれなかったクライアントの社長には、
お陰で傾聴力が磨くことができたと感謝しています。

これ、決して皮肉なんかじゃなく、本気でそう思っているんですよね。
「傾聴力」を磨くと人生が変わるとよく言われますが、ホンマですね!

タイトルとURLをコピーしました