030 組織変革における 研究者と実践者の違い

組織変革の文脈においてさまざまな研究や理論が発表されています。
例えばピーター・センゲ博士の「学習する組織」に書かれている5つのディシプリンなどは、
組織変革に必要な要素をすばらしく論理的にまとめてくれていると感じます。
U理論とともに、私が支援プロセスの設計に活用している書でありすばらしい理論です。

10年以上前、組織変革コーチとして活動を開始した頃、
たくさんの書籍を読みあさりました。
いろんな勉強会にも参加してとにかく組織や
組織変革に関する知識を詰め込んだのを思い出します。
その中にこの「学習する組織」に書かれた知識も当然含まれていましたが、
正直に言ってまだその価値が十分に分かっていたとは言いがたい状態でした。

たくさんの知識をインプットすると、
今度はアウトプットしたくなるのが人の常ですし、
なによりそれが「私の仕事」でもあります。

社員を怒鳴りつけてばかりいる経営者がいました。

この社長は離職者の多いことを悩んでいたので
覚えたばかりの「正しい理論」をお伝えしました。

例えばこんな感じです。
「この組織は社内の関係の質がよくありません。
改善するには、もっとコミュニケーションが必要です。ダイアログを通じて相互理解を深め、
異なる視点やアイデアを組織全体で統合することが組織変革の鍵となります」

なんてことをお話しするのですが、何が起きたと思いますか?

そうです、なにも起きないのです(^_^;

世界的に有名な学者が提唱する「正しい理論」を伝えているのに成果が出ないのはおかしい!
新米の森田コーチはとっても悩みました。

この社長にはもっと違う理論が合うのではないかと考え、
また違う本を読んでこれはいいと思ったことをお話しします。

でも、なにも変わりません・・・・

そんな苦しい状態を数ヶ月ほど続けながら、ようやく気づいたことがあります。
「人は理論や理屈だけでは動かない」
知っているつもりだったし、あたりまえのことだし、
いにしえの昔から言われ続けていることですが、
このとき、私にとってようやく肚落ちしたのです。

そこで初めてコーチングを意識し、真剣に傾聴力を高める努力をするのですが、
この話しはまた別の機会にご紹介しようと思います。

半年ほどトレーニングを続けてようやく「多少」の傾聴力が身につき出すと、
徐々に成果が出始めました。

そうです、クライアントの組織に変化が起き始めたのです。
その時、ようやく組織変革における「自分の役割」を理解しました。
ひと言で表現するとそれは理論を現場に落とし込む「実践者」です。
組織や人の行動を研究している人は世界中にたくさんいます。

それらの理論の多くはすばらしくまとまっており、組織の本質を明確に説明しています。
でも、それらを学ぶだけでは組織が変わるという成果につながりません。
誰かが実践する必要があります。

正確に言うと変革を実行するのはその組織の構成員ですが、
その実行をサポートする役割が不可欠です。
それも正しいことを言うだけの存在ではなく、一緒に走ってくれる伴走者的な存在です。

イメージしたのはスーパーマリオです。

マリオの職業はもともとは大工でしたが、いまは配管工が本職とされています。
水の蛇口をひねるとお湯が出る。
お湯の蛇口をひねると汚水が出る。
きれいなオフィスビルでこんなことが起きたとき、
地下の設備室でまちがった配管を繋ぎ直す作業をする作業者が必要となります。

泥水にまみれながら作業するその姿に自分を重ねて、
私はスーパーマリオになると決意しました。

とはいえ著作権があるのでスーパーマリオを名乗ることはできませんが・・

経営TOPから一般社員まで、誰一人として自分の組織が
悪くなることを願っている人などいるはずがありません。

それぞれが「良かれ」と思って振る舞っているはずなのに、
組織にきしみが起きて、どうしたらよいか分からずにみんなが困っている。

そんなとき、コミュニケーションの配管を正しく繋ぎ直せば、
思ったことが思ったように伝わるようになります。

「研究者」と「実践者」、それぞれ役割は違えども、
組織を良くすることに貢献したい思いは重なっているんだと思います。

私は実践者になると決めてから10年が経ちました。
同時に「評価者」・「評論家」・「傍観者」には
決してなるまいとも決めました。

「理論」を「現場の実践」に繋げる仕事は大変ですが、
とてもやりがいのある仕事だと感じています。
今、日本の経営マネジメントにとても大きな変化が起き始めています。

ところが、その変化に対応することを組織面から
支援する「実践者」の数が圧倒的に不足しています。

足らないなら育成しようと思い、変革リーダー育成のための
「組織変革塾」を開講中です。
本質的に組織を変えることに興味がある方は、是非お問合せください。

【質問です】

あなたの組織では、新時代のマネジメントについて
話し合われていますか?

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