024 ホンモノのコーチのあり方とは?

社員の笑顔 コラム

ホンモノのコーチという職業は、

いったいどんなものなのでしょうか。

最近はコーチングという言葉がすっかり市民権を

得ているように思います。

10年程前、ビジネスの世界で「私はコーチです」と言っても

「バッグのブランド名ですか?」と言われていたころを思い出すと、

時代は変化したなと感じます。

でも、ずっと前から「コーチ」という言葉は使われていましたよね。

野球や陸上競技などでは、

選手を指導してくれるコーチがついています。

これはコーチの中でも「スキル・コーチ」と呼ばれるのが正しいと思われますが、

一般的に選手よりも経験/能力が高い人がなっています。

本来の意味からすると、コーチよりも、

ティーチャーの方がふさわしいかもしれません。

あなたは、吉井 理人(よしい まさと)という野球選手をご存じですか?

今年からロッテの監督になった元プロ野球選手で、

FA制度で初めてのメジャー移籍を果たした名選手です。

その吉井氏が、ある雑誌の対談でメジャーリーグのコーチについて語っていました。

メジャーリーグのコーチなら、自分に対して

一体どんなすばらしいコーチングをしてくれるのか、

期待しながら最初のコーチにあいさつをしたとき、

そのコーチは吉井氏にこう言ったそうです。

「私はキミのことは何もわからない。

自分のことを一番知っているのは自分自身なんだから、

キミに教えることは何もない。

キミの方からコーチの俺に教えてくれ」

吉井氏はものすごく面食らったそうです。

私も初めてビジネス・コーチングのトレーニングを受けたとき、

まったく同じことを体験しました。

先輩コーチはこちらから質問するまで何も教えてくれませんでした。

いや、正確に言うと質問しても教えてくれなかった

というべきでしょうね。

私が「こういう場合は、どうすれば良いのでしょうか?」と訊ねても、

いつも答えは同じでした。

それは「森田さんはどう思いますか?」という逆質問です。

戸惑いながら「そうですね、○○というやり方があると思います」と返事をすると、

次の質問は「なぜそう思うのですか?」です。

分からないから聞いているのに!と思いながらもたどたどしい回答をすると、

それがどんなに稚拙で的外れであっても

「なるほど。では、それをやってみてください」と言われるのです。

実際にその考えを実行してみると、うまく行くこともありましたが、

失敗することの方がはるかに多かったのを覚えています。

どうすれば良いのかをめちゃくちゃ悩みましたが、

同時にめちゃくちゃ真剣に考えました。

その時、先輩コーチからは「スプーン・フィードはしない」という言葉もよく聞きました。

スプーン・フィードとは、

赤ん坊の口元まで食べ物をスプーンですくって持って行ってあげることを指します。

それが本来の意味ですが、

転じて「手取り足取り面倒をみる」とか

「甘やかす」ことの比喩にもなっています。

コーチングの場合は、「過保護にしない」と言った方が

しっくりくる感じがします。

吉井氏も同じ感覚を持たれたようですが、質問するまで

何も教えてくれないメジャーのコーチの背景について語っています。

「人から教えられたことは、すぐ忘れてしまう。

自分で気づいて自分で工夫して獲得したものしか

いざというときには使えない」

ちょっと見ると、そのコーチの対応は「冷たく」

感じられる場合もあるかと思います。

でも、本当に冷たいのでしょうか?

このコーチは、自分の力をどう発揮したいのかという方向性は、

プロである吉井さん自身が持っている、

という前提でコーチングをスタートしています。

完璧に相手を信頼して、受け止めているんですね。

なので、いきなりああしろ、こうしろではなく、

まず本人にどうしたいのかを確認しているわけです。

回答を考えてしゃべっているうちに、本人自身が、

なぜそうしたいのかをもっと深く理解する場合が

少なくないようです。

そうやって考えて身につけたもののみが、

本当にその人のものであり、その機会を増やし、

可能性を高めるのが自分の仕事である

ということがよくわかっているコーチだったと思います。

私の先輩コーチも、知識として教えてくれることは

少なかったのですが、

「自分で考えて、実行して、身につけることの大切さと威力」

教えてくれたように思います。

こんな風に書くと、結局自分で考えるんだったら

コーチなんて要らないのじゃないかと考えたことがありました。

でも、優秀なコーチは何を考えて、どう行動すれば

良いかをとてもうまく引き出してくれます。

なぜこうなっているのかなどを理解するのにも

コーチとの対話が有効で、「振り返りのプロ」と呼ばれる理由だと思います。

どちらかというと「教えたがり」の私には、

先輩コーチのように「訊ねられても答えない」という接し方は、

なかなかできていないように思います。

【質問です】

あなたの組織では、

マネージャーは部下にスプーンフィードせず、

自分で気づかせるように接していますか?

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