004 奇跡の育成劇 後編

社員の笑顔 組織変革事例

前回書いた「奇跡の育成劇」への反響が大きく、
たくさんの方から共感したというメールをいただきました。
メルマガへの反応があると、素直にうれしいですね♪

今回は「もっと読みたい」というリクエストにお応えして、
サラリーマン時代に経験した奇跡の事例をもう一つ紹介しようと思います。

前回は、K課長の反抗の原因だった、
工場内の部門間の壁からくる非効率さの改善にチャレンジした話でした。

その後もK課長と二人で話していると、こりゃ根本的に変えないとこの会社はあかんぞ、
という意見で合意し、工場改革を始めました。

この話も面白いのですが、
今回は育成劇なので、そちらはまたの機会にしますね。
※聞きたい人は、「聴きたい!」と私までメッセージをください♪

部門間の壁を取り払うために工場改革を始めると、
わかってはいたのですが、めちゃくちゃ忙しくなりました。
本来の部門長の仕事以外に、他部門との調整や対話会を企画/実施するのですから、当然ですね。
ランチ休憩も取れないほど忙しくしていました。

そんなときに、3・11の大震災が起きて、福島原発が停止しました。
日本中が計画停電で大騒ぎになったことを覚えてますよね。

そこで各コンビニが一斉に、サイン看板と店内照明のLED化を開始しました。

その流れで、クライアントからLED照明の開発相談がありました。
当時、開発部には電気や光学の専門家がいなかったので、
私が協力会社と一緒に開発を請け負うことになりました。

おぉ!忙しいぞ!!!

文字通り目が回るほどの忙しさになり、水銀粒のように日本中を転げ回っていました。
家にも帰れないほど忙しいのに、更に別件のLED照明開発の相談があったのです。
様々な事情から「断れない」案件でした。

おぉ・・・・(T_T)
とても悩みましたが、部下の女性社員に相談をして見たところ、
彼女は「やらせてください」と言ってくれたんですね。

二級建築士の資格を持つ彼女ですが、光学的な知識はもっていません。
でも知らないことは調べたらいいし、知っている人に教えてもらったらよいと考える、
私と同じポジティブな性格だったので思い切って任せることにしました。

状況が先回のK課長の場合と少し違うのは、
上司の私のほうが電気や光学についての知識があることですね。

ところが、私自身が忙しすぎて、彼女にアドバイスするどころか、
報告を受ける時間さえもまともにとれそうにないことを正直に伝えました。

不安がる彼女に対しかろうじて、失敗したら責任は俺が取る、としか言えませんでした。
完全放置状態ですね、なんと無責任なやつでしょうか!
開発期間は半年でしたが、なんとか間に合わせるため彼女は休日も返上して、
めちゃくちゃ頑張ったようです。

ある日、開発協力してくれているプラスチック成形工場の役員から電話がありました。
聞いてみると、お宅の女性社員が工場に来て、成形機のそばから離れない。
オペレーターが装置を調整するのに、一緒になってずっと議論をしている。
それも連日夜遅くまでなんです、という話でした。

そんな迷惑をかけていたのか!

私はてっきりクレームを受けたと思って平謝りしたのですが、
相手は「ははは、クレームの電話じゃないですよ」と言います。

彼女の見せてくれたものづくりへの真剣な姿勢が、弊社の工場の雰囲気を変えてくれました。
それまでのうちの社員は、言われた作業をやるだけが仕事だと思っていたようだが
彼女に刺激されて本当にいいモノを作ろうとして、必死になってがんばり始めたんです。
工場長まで一緒になって、自社技術の限界を極めようと真剣に応援してくれました。
工場の雰囲気がガラッと変わったんです。
すべてあなたの部下のS子さんのおかげです。
これは上司のあなたが、日頃から素晴らしい指導をされているからだと思います。
今日は森田さんにお礼を言いたくて電話しました。

私は返す言葉がありませんでした。
指導なんて一言もしていなかったからです。

結果的にこの開発は成功しました。

当初、要求性能の60点とれれば良いほうだろう。
でも、それだけあればなんとか言い訳ができる。
私がクライアントに謝りに行くことでなんとか収められるだろう。
強引に仕事を持ってきたT支店長も謝罪に連れて行こう、などと考えていたのですが、
彼女は私が想像もしないアプローチで90点を取ってくれたのです。

残念ながら他社とのコンペに勝てず、量産化はできませんでしたが。
彼女の頑張りをみていたクライアントの役員から(東京の有名な上場企業)、
彼女をうちに出向社員として出してくれないだろうかという相談まで来ました。

部下の課長2名が、
来季は彼女を自分の課に配置転換してほしいとこっそり相談にも来ました。

そうなんです。
彼女は大きく成長したのです!
それも、社内だけでなく、他の会社から認められるほどに。

開発成功の打ち上げのとき、彼女からお礼を言われました。
「信頼して任せてくれてありがとうございました。」

 

 

 

 

 

さて、上司の私は何をしたのでしょうか。
恥ずかしながら、何もしていません(T_T)

いや、それではあまりに自分が情けないので、なにかないかを必死で考えました。
一つだけありました!
私は彼女に全てを託したんです。

成功の確率は高くないけど、託すしかない状態だったので、信頼しようと努力しました。

忙しくてなんのアドバイスもできませんでしたが、
流石に失敗の責任だけは取ろうと覚悟していました。

結果として、彼女からはなにも言わずに任せてくれて、
責任は取ってくれる上司に見えていたことになります。

信頼して任せる。
やはり、これが大事なんでしょうね。

奇跡の育成劇の2つ目でした。

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