私は組織開発の仕事を始めるまで、30年近くもロボット開発に携わり、
17件ほどの特許を取得してきました。
と言っても、莫大な利益を生んだわけではないので、
自慢はできないのですが、新しいアイデアを考えたり、
特許のための書類を作るのはとても楽しく感じます。
ある時期、弁理士をめざそうかなと思ったこともあるくらいです。
「現状をどうにかしたい」という強い欲求から特許取得の扉が開きます。
与えられるテーマは「もっと簡単に」、「もっと早く」、「もっと正確に」など、
その時のシステムによってさまざまですが、共通しているのは「もっと」という言葉です。
それも数パーセントとか、1割の性能向上ではなく、
望ましくはなにかを半分にするとか、
なにかを一桁変えるなどと言う発想が求められます。
長いものは短くしてみます。
丸いものは四角くしてみます。
白いものは黒くしたり、
透明にしたり、逆さまにしたり、
引き延ばしてみたり、
思いつく限り頭の中でもてあそびます。
このプロセスがとても楽しくて、それこそ寝食を忘れて夢の中でも、
解決するアイデアを探しています。
文字通り「夢中になる」とか「上の空」というヤツですね。
最高にフローな状態なので本人は楽しいのですが、大きな弊害もあります。
このモードに入っている私はほぼ人の話を聞いていません。
傾聴なんて、とんでもない話しです。
周囲でなにが起こってもまったく気になりません。
サラリーマン時代のある日、夜中に思いついたアイデアを早く図面にしたくて、
早朝4時頃に出勤したことがあります。
午前中いっぱいかけて、概要がまとまったので、とても満足し、
ランチを食べに外へ出ると、いつものうどん屋が閉まっています。
そこで初めて、その日が祝日だったことに気がつきました。
コンビニで弁当を買って会社に戻ると、
他の社員はだれも出社してきていないことに、ようやく意識が向きました。
現在はもうロボット開発の仕事はやっていませんが、
マニアックに趣味のものをいじっているときは同じように楽しい状態です。
ホームセンターへ立ち寄り、見かける材料からいろんな改造や製作のヒントが、
わき上がってきます。
アイデアに導かれるままに、ゴムパッドや色つきの針金などをほぼ思いつきで、
カゴに入れていきます。
家に帰ってからあらためてそれらを眺めると、
さて私は一体なにを作ろうと思っていたのかがわからないなんてことが珍しくありません。
訳のわからない材料が大きな段ボール箱に、3つくらい溜まっています。
社員の娘達からは「社長のおもちゃ箱」と言われ、
年末の大掃除や事務所の引っ越しの度に廃棄処分の圧力がかかりますが、
なんとか言い訳をして大事にしています。
もし、ある日、突然捨てられても、
日々の仕事や生活にはなんら影響がないことは、よくわかっています。
でも、それでも置いておきたいのが、
マニアのこだわりの道だと信じています!
「社長のおもちゃ箱」が、いつか必ず日本の役に立つ日が来ることは、
まちがいありません。
ホントカナ~^_^;