開発/エンジニアリング
技術者のなかには、他の人と異なる高いスキルを持ち、
専門的な仕事を1人でこなしている方もいらっしゃることと思います。
ですが、いくら専門性が高いと言っても、
コミュニケーション不足が生じたまま放っておくのは得策ではありません。
では、なぜ一般的に「技術者の扱いは難しい」のでしょうか?
これらを社内の課題として挙げる企業様が多くいらっしゃいます。
では、なぜこれらの問題が生じてしまうのでしょうか?
営業部は積極的なコミュニケーション上手が多いのに対し、
開発部は黙々と作業をする人が多くコミュニケーションが苦手?
こんな固定観念を持つ人もいるかもしれません。
営業部の中にも黙々と仕事をするタイプの方がいるように、技術者=コミュニケーションが苦手、とひとまとめにするのは少々乱暴すぎます。
いろんな人がいるはずなのに、コミュニケーション不足が生じていたり、個人主義のマインドが強かったりする。
共通認識がない・共通言語がない・社内の人が同じ方向を向いていない…
「組織」のあり方に問題があるからこそ、問題が生じるのです。
「今週中に納品する」という指示があったとします。
それに対し、
- Aさんは、
金曜の就業時間内に仕事を完了すればOKと思っている - Bさんは、
土曜までは「今週」なので、土曜が最終ラインだと思っている - Cさんは、
金曜に上席のチェックを受けるので、
木曜中に完了すべきだと思っている
これでは実際に仕上げるタイミングが三者三様。
管理者がイライラする原因になることが目に見えています。
さて、何が問題だったのでしょうか?
「この仕様はなかなか難しいと思いますよ…」と技術者が言った時、
- 技術者Aさんは、
「時間と開発費をもっともらえたらできるかも」
と考えている - 技術者Bさんは、
「無理だ」という断りの返事だと考えている - 技術者Cさんは、
「やりたくないから、早く諦めてくれないかなぁ…」
と考えている - 営業Xさんは、
「難しいけど、頑張ります」と、
やってくれると考えている
数日後、営業のXさんが「あの件できましたか?」とエンジニアに声をかけると、「難しいと言ったのに、なんで先方に断ってくれなかったんだ!」と怒られてしまいました…。
さて、何が問題だったのでしょうか?
問題の本質は、繰り返しになりますが「組織のあり方」です。
1人1人がバラバラの方向を向いており、ビジョンもない、共通言語もない状態でいるから問題が生じているのです。
個人の技術力がモノを言うと思われがちな開発の現場。
でも、実際はクライアントの想いをカタチにするための開発を行うことが求められます。
- クライアントは何を求めているのか?
- そのために、会社が提供することは何なのか?
- チームが提供することは何なのか?
- 自分が提供することは何なのか?
自分の担当する仕事内容だけに集中するあまり全体が見えていなかったり、本来の方向性を見ていなかったりすると、仕事にはどんどんズレが生じてしまいます。
結果として、
こんなはずではなかったー
時間と費用をかけて開発してきたのに、想いとは全然違うモノになってしまった。
…これでは、会社全体としてミッション失敗となってしまいます。
ですから、個人のスキルよりも、組織として共通のゴールを目指して、コミュニケーションを取りながらズレが生じないように協力して開発を進めていくーということが大切なのです。
実は私も元は開発側の人間であり、組織のあり方に悩まされてきた人間のひとりです。
当時、大手物流システムメーカーで開発部長を勤めていた私は、ありがたいことに能力をかっていただき、別企業へ役員待遇で転職を果たしました。
しかし、喜んだのもほんのつかの間、転職からわずか1ヶ月でリストラに遭いました。その原因は、組織の内紛に巻き込まれたことでした。
ちょっとしたコミュニケーション不足や部署間の衝突が、やがて組織の内紛に繋がり、会社を二分する争いとなった結果、能力の高い多くの技術者たちが退職に追い込まれました。
この事実から、私は初めて「スキルよりも大切なもの」の存在に気づきました。
しかし、まだ日本では多くの会社組織が、それに気づいていません。
私だって、リストラがなければ一生気づかなかったかもしれません。
組織のあり方を正すことで、
自走型の組織を創っていきたい。
これが私たちの願いです。
自発的に社員同士がコミュニケーションを取り、
同じ方角を向いて業務を進めていく“自走可能な組織”にしていきませんか?
自走可能な組織にすることで、このようなことが実現します。
- 自分の役割が明確化される
- 目的意識を持った自発的な働き方をするようになる
- 目的と役割が明確になり、仕事へのモチベーションが上がる
- 組織力が上がる
- 働きやすい環境になる
- 開発そのものの質が向上する
【1】組織の概要
メーカー(東証一部上場企業、商業施設用サイン・什器製造)
社員数:450名
売上:300億円
【2】ご依頼いただいた背景
「開発部のメンバーへ仕事に対する向かい合い方を伝えて欲しい」とのことで、開発担当役員様よりご相談があった。
状況を詳しくヒアリングさせていただいたところ、開発部員の意識が低いことにより、
…という問題が生じていた。
【3】支援前の状況
メーカー(東証一部上場企業、商業3つの事業拠点(東京本社、関東工場、北陸工場)があるものの、どこへいっても開発担当役員が来るのを待っている状態であり、担当役員としてはもっと自分たちで考えて決めて前に進んで欲しいと思っていた。
「作業の指示待ち」とまでは言わないが、「意思決定待ち」の状態が多く、役員が来るまでなにも決まらないため、役員としてはこんなことでは他社との競争に勝つことができないのではないか…という焦りも感じていた。
営業部は声が大きい人が多い。営業部は基本的に自分の意思や要望をしっかりと伝えてくる人が多い反面、どうしても開発部は思ったことが言えないことが多かった。
担当役員としては、営業部とケンカをする必要はないが、開発部の人ももっと自分の信じるところやホンネを伝える胆力を鍛えて欲しい…という思いがあった。
…部下の成長を期待する開発担当役員様にヒアリングをさせていただく中で、さらに具体的な問題点や課題を深掘りしていった結果、3つの課題に焦点を当てることに。
【4】対処すべき課題
会議で誰も
発言しない
プロジェクト会議、生産会議、部課長会議、製販会議など、どの会議でも開発部メンバーは「お客さま」になって静かにしている。仕事の仕方が受け身なので、「決めてもらったらやります」というのが精一杯。
日本企業が世界に誇っていたもの作り精神は一体どこに行ったのだろうか…。
決められたことが
実行されない
さまざまな会議で決められたことが「忙しいから手がつけられない」「やるのは決まったけど、仕様が決まっていないのでできない」「いつまでにやるかが決まっていないからそれを決めてからでないと動けない」など、ありとあらゆる言い訳のオンパレード。
実行されないのなら、一体何のための会議だったのか分からない…。
社員が主体的に行動しない
海外展開が始まった時期で、製作図面も英語で書くことが決まり、負荷が高くなっているのは事実だが、60名もいる開発部員の中で誰一人積極的に語学を学ぼうという人が現れない。
将来の課題解決は全て先送りで、5年先、10年先のために何をすれば良いのかを考える人が一人もいなかった…。
【5】実施した内容
1年間に渡り、開発担当役員とのエグゼクティブコーチング、および部課長14名によるグループコーチングを毎月1回実施。
次世代の業務基盤のあり方や、プロフェッショナル集団をめざす自身のあり方を深く探求し、個人や組織の課題の見極めと解決を支援。
また、支援開始3ヶ月後から、3ヶ月おきに開発部全員によるワークショップを3回実施した。
【6】得られた成果
部課長の視座が高まり、各拠点や一般社員を巻き込んだ組織改善活動を主体的に開始。効率的な問題解決の手法、目標の立て方、管理の仕方などを手に入れて、やればできるという自己肯定感、自己有能感の向上が見られ、次期部長層の候補者も4名に増加。開発担当役員が落ち着いて将来のビジョン、計画造りに専念できる状態が実現。全国3カ所の事業所に分かれている開発部において、コミュニケーションを取るために自主的に部問報を発刊するようになった。
リーダーが自主的にコーチングやファシリテーションを学び、事業所毎に定期的な対話会も開始。開発部員の振る舞いに変化を感じた他部門からの評価が上がり、さらにモチベーションが向上するという好循環が起きた。支援の成果が部門内外で好評であったため、3年目もスタイルを変えて継続して支援を行うことが決定した。
【7】参加者の声
これを継続しなければバラバラになる。このつながりは意外と強い。(課長 50歳)
公私問わず、とにかく動く!やってみる!を継続していきたい。(係長 36歳)
着目点/切り口が大事。リーダーとしては、早い段階で「共感」が広がるような動きが必要と感じた。(課長 45歳)
プロ育成の活動を見て、気づきがあったのでセミナー、通信教育など受講していきたい。(課長代理 42歳)
顔を突き合わせて密に話をして進めていくことの大切さが腑に落ちた。(課長 44歳)
今期芽生えた北陸工場、関東工場、東京本社開発部の事業所を超えたつながりをKEEPしていくのは私の振る舞いだと気がついた。(部長代理 48歳)
過去にないほど仕事について深く考えて苦しかったが、楽しかった。「万難を排して成し遂げる」ということの意味がわかった気がする。(部長代理 50歳)
育成プランのワークで、若手社員のことを知らなすぎると痛感した。(九州支店長 47歳)
部下の考えや思いを実は全く把握できていないことに気づかされた。(大阪支店長 52歳)
「育成」とは重要なものであるとの認識はしているけど、深く考えたり、話し合ったりすることは殆ど無かったことに気づかされました。明日から全員と面談を開始します。(名古屋支店長 55歳)
【8】まとめ
開発部員ひとりひとりの意識が向上し、自主性が生まれるとともに、部門ごとの結びつきや事業所の枠を超えた交流も盛んになった。
また、開発担当役員の仕事と、事業所ごとのリーダーの仕事のすみ分けもでき、意思決定のスピードを高めながら、より戦略的に開発を進めることができるように。
仕事が進めやすくなっただけでなく、何より部署内の雰囲気が良くなった、と他部署からも好評のため、今後も継続的に支援をさせていただける運びとなりました。
“組織は生き物である”という考え方から、内部の複雑な問題を当社側からの一方的な研修や相談で解決することはできないと考えています。
そこで、調査・傾聴・面談やコーチング(個人またはグループ)・事業推進のための具体的なプランニング、効果測定、進捗フォローなどを必要な段階で随時提供させていただきます。
また、問題解決を目指すのではなく、“自らで問題解決することができる組織“になることを目指すため、一般的なコンサルティング会社様とは提供するサービスにも違いがあります。
詳しい方向性は、初回面談時にご相談となります。
こんな想いをお持ちの方なら、組織変革のチャンスです。
- 「エンジニアは口下手な人が多いから、しょうがない」
- 「技術が高ければ、個人プレーもやむなし」
- 「営業部門と技術部門が対立するのは、当たり前」
今までの常識を捨てて変革するという意思が大切です。
チームとなって考え、開発を進められる自走型の組織にしませんか?