ご依頼時はどんな状況で、どんな課題感をお持ちでしたか?(あなた個人、または組織に)
業績が順調に伸び社内の改編整備が進むのに合わせて、開発組織の改善を仕掛けてきたのですが、なんとなく反応が悪いのです。少し改善したと思ってもまたしばらくすると元のようになってしまう。どうしてそうなるのだろうと、聞いてみたときに返ってきた言葉が「やらされ感」というものでした。これはショックでした。
私たちの仕事は「開発」といっても対クライアント向けが多いので、どうしてもそちらからの要請を全面的に受けざるを得ないのですが、それがどれも短納期と設計変更の連続。しかも生産側からは早く図面を出せと急かされ、なにか不具合があれば営業からお叱りを受けるという立場、そんななかで「自分たちはやらされている」という意識が染み付いてしまった。
ただし、この「やらされ感」というのは言われないとやらないということではありません。とにかくやらなくてはならないことについてはまじめに真剣に取り組むのです。それを苦痛として受け止めれば、そのうち「燃え尽き感」になるのだそうで、そうなると何も手につかなくなるから会社も辞めたいと思うだろうし、それはそれと納得してガッツで臨んでもそれへの対応がすべてになってしまうから、改善、ましてや改革など関わっていられないということが起きていました。
これはある意味危機的な状況です。改善・改革に対する意識が低いというのはいずれジリ貧か、流れについていけなくなることが明らかです。何とかこのゆがんだ「やらされ感」を払拭しなければこの先がありません・・・そういう危機感がありました。
ご依頼時と今とで、どんな進化・変化が生じているでしょうか?(あなた個人、または組織に)
層別に拡大し全員がその研修に何らかの関係をもち、ようやく現在、改革に向けての「インフラ・環境」「ルール・規範」「人(マインド・スキル)」の構築が具体的なものとして動いているところです。
私個人的には、この三年間でいろいろな問題について勉強させていただきました。同じような経験はこれまでもしています、しかし今度の研修は、継続したことが一番の成果であると思っていますが、まだまだ深い根っこが生えたとはいえません。特に心配なのは、この組織に従来の組織概念を当てはめようとする動きです。組織はきれいなピラミッドになっているのが美しいと確信している人々には、おそらくこの営業と生産との「あわい」にある開発の組織など理解できないであろうと思う。均一化すれば管理は最もしやすくなるというのは常識であるが、そのような組織がこの世の中での競争に勝てるか、生き残れるかという問題です。その視点からこの活動をもう一度体系化することが必要だろうと思っています。
その進化・変化のストーリーを詳しく聞かせて下さい
現在、活動のなかから、メンバー達が考えてくれた考えをコンセプト化し、職場の改築移転、マニュアルに変わるシステムの構築、設備の充足など「インフラ・環境」「ルール・規範」づくりを実際に進めています。今年中には形になるのですが、ここまでこぎつけられた基盤には、おそらく「人(マインド・スキル)」の向上があったものと信じています。
しかし、課題はここからで、それらの改革は、(改革というからには当然ですが)仕事の質をワンランクアップすることを「人」に要請するものです。それに携わる人のマインド・スキルも視座も一段上げないとついていけないでしょう。
そんなはずではなかったという者が出てくるのが不安でなりません。しかし、それに自ら気づきチャレンジする者たちが、これからのこの職場を、「リードするもの・フォローするもの」の良い関係性をつくっていってくれるだろうと期待しています。
私たちがこの改革で求めているのは、「生産性の向上⇒効率アップ⇒標準化」ということではありません。 「生産性の向上⇒有効性アップ⇒多様性対応力強化」ということです。その図式を勘違いすると、ただの改善活動になってしまうでしょう。
そのプロセスの中で森田が貢献できた部分はどのようなところだったでしょうか?
まさに私のコーチとしていろいろと相談させていただいたことです。これは大きい効果です。相談としても、たまには意見の相違もあって激論となったこともありますが、基本的には「聞いていただける」ということのあり難さを再認識しました。部下を含めて「相手の話を聞く」ということには殊更気を使っておりましたが、やはり、「効率」の観点から「答え」を言ってしまっていたことが多々あることに気づかされました。いまは、いかに相手に時間をかけて考えていただけるか、あるいは話を聞いてあげられるか、これが課題だと思っています。